モグラ

土の中
土竜の僕らは知らない空を思い描く
暗くてもよく見える目なんか
ただ光を知らないだけなんだ

一日一度
揺れる大地
響き渡る
血の弾丸が刹那の悲鳴を上げながら飛び交う音
僕らは土中で静かに
見つからないように
多くの人が切り捨て銃に込めたモノを受け継いでいく

何となく生まれ
何となく生きて
必死で逃げている
昨日も明日もない
あるのは確実な始まりと終わり

土の下
土竜の僕らは判らない昼夜を思う
土の中に残された
多くの生の痕跡が僕に話し掛ける

―真っ直ぐ歩いて
 突き当りを右に
 歩いて
 ずっと歩いて
 光が見えたら走り出して
 太陽が逃げない内に―

暗闇で生まれ
暗闇で生きて
必死で生きてきた
狂っている日常
逃げ出した今
ああ
あれが光なんだ

眩し過ぎて何も見えない
あの音が強く響く
耳元を掠める心
苦しい…

貫いた弾丸が伝えてくる思い
後悔と自責
なぜ彼は涙と共に僕を撃ったのだろう
暗闇が見えてきた
伸ばした腕を掴む彼の掌は冷たくて
謝罪の声すらも霞んでいく
暗闇が深くなる
戻っていくだけ
僕は土竜
土の中に生きる竜
暗闇と共に生まれ暮らし
弾の思いを受け継いでいくだけ