ハナ ガ コワス セカイ

記憶の残滓に夏の午后
見つけた華は薄滅紫の花弁
鶯色の茎根には二つの葉、萌黄色
項垂れ加減
今にも朽ち果ててしまいそう
持たれた樹皮に引っかかった水筒
零れた水は地面と華を鮮やかに染め上げて
見惚れた僕の意識は消えて

赤蘇芳の衣を纏った女性が悲しそう
退紅の部屋に佇む
僕と二人
すらりと動いた柔肌が
僕の頬に触れたとき
僕は世界に戻された

萌黄の地面に座る僕
鶯色の茎にもたれて
遠くで聞こえるスクリーン越しの悲鳴
現実感を失った世界
華が世界を壊している
薄滅紫の華が
人の世界を養分に育っていく