ロボウ ノ ソウボク ノ グコウ

火球から私に向けて一筋の炎の道
枯れもしない私はもう幾年
この砂塵の寝台で眠っているのだろう
熱と疲労が縛鎖となり
もう微塵も動かない体躯
ただ愚にもつかぬ妄想だけ
微かな思考の片鱗
私は人であるのだろうか
最早、私を知る者はいまい
私に語り掛ける旅人もここには来まい
私は誰にも認識されず
私は誰をも認識しない
それはまるで死人ではないか
いや、死人は生者に認識される
ならば私は路傍の草木に同じ

ふと声が響く
それが妄想が発した物なのか
真実の声なのか
判別がつかない
私は干乾びた声帯を震わせる
「私は何者か?」
声が再び鼓膜を弾く
「誰でもない者」、と
「貴方は何者か?」
私の問いは虚空へ消え入りそうだった
「誰でもない者」
最後に私はもう一度問う
「人とは何か?」

「お前ではない者だ」