サジン ノ セカイ
足音が響く 静物画の世界 常夜燈に照らされた四角の空間に 車座の彼らの着散らした羽織が影に揺れる 轟音 また何かが崩れた 一様に目を閉じ ただ黙祷 終わりを先延ばしにした罪の心が覗く 禿頭の翁がたてる茶煎の音色が 破壊音が残した静寂を縫い 皆の耳に流れ込む そして轟音 小さく聞こえた誰かの悲鳴 彼らは天井を仰ぐ 茶人はただ瞳を閉じ 茶を点てる やがて皆の元に並ぶ煎茶 手に取り口に付け 天井を破る巨大な足に皆 踏みつぶされる 茶人は静かに瞳を閉じていた