ゲンジツ ト ゲンジツ ノ サカイ ノ マボロシ

地面の冷たさが時間を少しだけ留めてくれた
冷気を含んだ風が少しずつ時を進めていく
草木が象った円形の神域
切り抜かれた天に描かれた望月
灰色の雲は螺旋に拡がる
漠然とした意識を走り抜け消えていく思考を
何とか少しでもつかみ取ろうともがく
しかし明瞭な意識は至高の思考を摘み取ってしまう
また朦朧
無意識に伸ばした掌が空をつかみ取り
幻に色を得たそれは掌の上
踊るように
笑うように
消え去る刹那まで
ああ愚考愚考
何も考えるな
感じるのに必要なのは五感のみ
無用な愚考は棄てるがよし
どうせ現実と現実の境に生じた
夢想のごとき幻なのだから
明けの明星見えるまで
無心に世界に溶けていればいい