シュカ ノ タビ

切れ端の笑顔が貼られた赤錆の駅に立つ
冷気の壁をすり抜けて熱気に焼かれる石畳
湧き出る雫はそのままに
慌てて切符を車掌のもとに
朱夏の旅は全てを棄てて

屈んだ膝下蟻が行く
下ろした視線に喰われる飛蝗
鎌切る蟷螂睨む瞳は
煙草を知らない頃のよう
小さく震える端末で火を圧し消して立ち上がる

川の流れが心を奪う
輝ける夏の香に全てを預け
天空見上げて寝転がる
丸い石は痛くない
そんな事は知っていた
画面が見えない端末を水に預けて声を奪う

太陽に向けて歩み行く
疲れを知らない青のように
朱に染まった身体を奮わせ
たどり着いた頂上
歪む視界で未だ震える端末
天空羽ばたく朱雀のように