タビネコ

足元を取られる底なしの沼
覚束無い足取り 黒猫が歩く
どこを目指してここに来たのか
どこから歩んだ結果の場所なのか
何もわからないまま
必死に足は明日に向けて
黒猫の首にはペンダント
そうこれは主からのプレゼント
靄の向こうに掠れた笑顔
小さな鳴き声に託された意味は多くて
ここに生きている
必死で必死で
今にも沼は呑み込もうとするけれど
ここに生きている
何度も何度も
確かめたこの四本の足が地を踏みしめて
遙か彼方へ向かおうとする意志だけは
ここに生きている
助けて助けて
忘れないでまた会いたいと願いは儚
絶望の沼はまだ果てないし
この虚無感もまだ消えないし
あなたと過ごした街も思い出せず
あなたが目指した街も思い出せず
それでも一つ覚えているよ
あなたがくれた夢だけは
あなたがくれた明日だけは