ホン ノ ヒトトキ

花咲く川辺で足を延ばして
濃いめのミルクティ 水筒から注げば
文庫を開いて心を見よう
春は優しい恋物語
黄昏時には薄紅の
花のしおりを挟んで帰る

輝く空気を吸い込んで
冷たいコーヒー 一口飲んで
文庫を開いて旅に出よう
夏には激しい戦記に浸り
黄昏時には幻の
勝鬨の残響を挟んで帰る

窓辺に座れば月の畔
猪口に注いだ吟醸酒
秋にも酔って探偵気取り
宵の口には苟且の
明日のひとかけ挟んで閉じる

炬燵の中は黄昏時
焙じ茶のみつつ夢うつつ
冬には静かな詩の中へ
宵の口には夢の口
うつつの涙を挟んで眠る